説明.
ヘンリーフランクのスタンダード一番人気フォルダー! |
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作者 |
ヘンリー・フランク未だ、解説がありません |
解 説 |
ヘンリー・フランクとは、1985年頃、ソルバングナイフショーで出会った。 その作風は、精緻にして剛健、清冽にして温りを感じさせ、全体から受ける刀姿のバランス良さにまるで雷にでも打たれたような衝撃を覚えたものだ。 そのころ、ヘンリー・フランクはナイフ作りを初めて20年ほどが経っていたと思う。 彼がナイフ作りを始めた頃の、簡素なパンフレットを見せてくれたが、スタンダードのスタッグハンドルフォルダーが$250、ペンナイフが$450だったので、1985年の当時、それらは、およそ10倍に跳ね上がっていた。 USAのナイフコレクターの中には、ヘンリー・フランクだけを蒐集する専門のコレクターが何人かいると聞いたが、それも一方でうなずける。 私が認める最高のお気に入りナイフメーカーはヘンリーフランクと、R・W・ラブレス。 この双璧の共通点は、手のぬくもりを感じさせる”何か”がそこにある。まさに、一人のアーティストの中に、一流のカスタムナイフメーカー、一流のエングレバー、そして一流のデザイナーが終結した、超一流の集合体なのだ。画家に例えるなら、まさにピカソのような存在であろう。 本作は、ヘンリーフランクの一番人気。スタグハンドルのスタンダードフォルダー。ブレードはヘンリーがその切れ味で唯一認めた炭素鋼。 そこには彼独特の自らの手による精緻な彫刻が施されている。まさに、ブレード彫刻だ。 せっかく彫刻を完成させても、焼き入れ後、ブレードが曲がればお釈迦となる難儀な作業だ。 ブレード彫刻は奥が深く、エングレバーと呼ばれる専門のアーティストが存在するぐらいだ。 代表格として、有名なリン・スキャグスや、マイケル・コリンズがいるが、ヘンリーフランクの掘りは、何か、それらを凌駕する、特別の”何か”良質の味わいのようなものを感じさせる。 彫刻のモチーフはオークリーフ、どんぐり、唐草模様。ハンドルは、ヘンリーフランク独特の感性により選ばれた鹿角(スタッグ)をこれまた独自の加工技術を加え、古美仕上げと云うか、ヌメヌメと高貴に輝き、心地よい経年を感じさせる処理が施されている。 まさに、手の平にしっくりとなじみ、えもいえぬ至福の時を体験できる。ヘンリーフランクならではのハンドリングに脱帽した。 余談になるが、コレクターの皆様へ老婆心ながら少々お節介を。 ご存知の秋葉原事件以降、ダガーナイフがご法度になってしまった。 そのことから、手持ちのラブレスダガー他、エンスのダガーナイフを2009年のニューヨークナイフショーでトレードしようと考えていた。 ちょうどその時期、知人を通してあるコレクターがラブレス他、カスタムナイフをいくらでもいいから手放したいと云う話が舞い込んだのだ。 私は喜んでそれを引き受け、ナイフショー会場に勇んで乗り込んだ。しかし、何人かのディーラーに声をかけたが、卒倒するような安値を提示してくる。 しかも、ラブレス以外はNOと断るディーラーもいた。「2年前ならもっといい値を提案できたのだが」と申し訳ない顔をする。 リーマンショックの翌年、米経済が疲弊し、ラブレスと云えども値を崩していた時代だった。 そんな時、会場入口のすぐ右側にテーブルを陣取っていたナイフディーラーが声をかけてきた。 ほかのディーラー指値より5割〜2倍のプライスで売る自信があるので、預かりたいという。 ナイフショーの主催者と懇意にしている様子で信用してしまった。帰国後、連絡を取るが、「もうすぐ売れそうだ」と何回もずるずると引き延ばす。 半年を過ぎると、事情を知るエングレバーのサイモン・リットンが心配してくれ”USAナイフ業界の恥”とばかりに、そのディーラーに対して援護射撃をしてくれるものの埒が明かない。 そのうち、まるきり連絡が途絶えてしまった。 ラブレスのダガーだけでも2万ドルはする。まるで詐欺にあったような気分だ。そんな中で2本だけ助かったナイフがある。 本作の、ヘンリーフランクのフォールディングスタグだ。 いずれも、私の目からすれば高評価の逸品お気に入りだった。「いくらでも良いから」と頼まれてはいたが、目まいがするような安値ではとてもトレードする気にはならなかった。 ディーラー指値より少し高くても、もう小生が購入するしか無いと決心したのが幸いしたのだ。 しかし、お預かりした他ナイフたちは、卒倒するほどのUSAディーラー指値で申し訳なかったが、一部を弁償するはめになったのだ。USAカスタムナイフディーラーはほとんど良い人たちだと思うが、こんな人もいるのでご用心。 |