飯塚 重房作 炭素鋼「籠手切丸」黒染 5寸･鎬造り 両刃

昭和17年、刃物の町三条に生まれ、高校卒業と同時に、刀匠・岩崎重義に師事。後に刃物の天才と誉れ高い刀匠・（長島宗則（ながしまむねのり）翁の知遇と得、数々の秘伝を伝授される。二人の名匠のもとで鍛えられた飯塚重房。その腕は確か、30代ですでに包丁の大家として世評が高く、61才の現在、右に出る者なく大輪の花を満開。

その円熟の技は、前回の「籠手切丸」より一回（ひとまわ）り大振な、《炭素鋼「籠手切丸」鎬造（たんそこう「こてきりまる」しのぎづく）り5寸》として実現された。尚、本品は、鎧（よろい）の一部である堅固な“籠手”おも一刀両断する、妖刀（ようとう）「籠手切正宗（こてきりまさむね）」に因（ちな）み名付けられた懐刀（ふところがたな）であり、宗正刃物の特別作品である。

刀身は、重房秘蔵の高純度炭素を、これまた秘蔵の蔵金（くらがね）（江戸期古材）に、秘伝本割込鍛造（ほんわりこみたんぞう）した豪毅な造り。研き仕上げは、丹念に“セン”（鋼を削る手道具）を掛け、さらに、京都産○カ正本山砥石（まるかしょうほんやまといし）及び刀剣用内雲砥石（とうけんよううちぐもといし）など数種類の天然砥石を駆使。刀匠・長島宗則翁直伝の“刀剣研き”が施されている。

その名刀を彷彿とさせる刀姿美は、雄渾（ゆうこん）にして流麗。さらに、二枚貝を想わせるハマグリ刃は、フラットに近く研き上げられ“カミソリのような鋭い切れ味が与えられている。日本一の切れ味を誇る、《炭素鋼「籠手切丸」鎬造り5寸》。真に切れる刃物を求め、不断の精進と天性の資質に恵まれた、名工・飯塚重房ならではの、後英なる逸品である。