刀匠･竹花一貫斎繁久作 玉鋼片山尻漆籐巻把小刀5寸･両刃

刀匠・竹花一貫斎繁久（たけはないっかんさいしげひさ）。昭和46年、名工の誉高い笠門（かさま）一貫斎（いっかんさい）繁継（しげつぐ）の流れを汲む、名匠・酒井一貫斎繁政（さかいいっかんさいしげまさ）を師と求め入門する。竹花22歳の時である。

先手（さきて）を勤め、向こう槌（づち）を振るい、刀身彫刻を学び修業の日日を送る。「槌（つち）の柄を血糊（ちのり）で濡らすことも度度あったが、苦に思ったことはない」と云う。

昭和52年、文化庁認定刀匠となり、師より、一貫斎の栄誉「繁」の字を授かり繁久を名乗る。同年、新作名刀展に初出品初入選。翌年には努力賞を受賞している。

そして、記念すべき第18回新作名刀展において、南北朝の名工、備前（びぜん）長船（おさふね）長儀（ちょうぎ）肉薄する相伝（そうでん）備前（びぜん）を、長尺の太刀（たち）で出品し優秀賞を受賞。小板目詰み、豪壮な沸（にえ）本位丁字刃（にえほんいちょうじば）は、「長儀（ちょうぎ）の名刀再現なりや」と集目（しゅうもく）を集める。

「地金（じがね）こそ日本刀の神髄」と云う一貫斎繁久。そこには、世界の冠たる日本刀の素材である“玉鋼”にその意味を求め、江戸初期の慶長新刀に思いを馳せる。

今回の≪玉鋼片山漆籐巻把小刀（たまたがねかたやまうるしとうまきづかしょうとう）5寸≫は、当店が意匠を起した狩猟家の為の護身刀。相州伝の完成者であり、古今無比の名匠・五郎入道正宗の“名物包丁正宗”を彷彿とさせる竹花、入魂の逸品。

竹花の狩猟刀造りは、日本刀を構成する三大要素である「姿（すがた）、地鉄（じがね）、焼刃（やいば）」に遊び没入する。幅広い感性と技倆を磨くための研鑚の場であり、息抜きの時でもある。

刀身は、玉鋼。姿は平造（ひらづく）り。匂い立つような板目の地肌は名工の証。

そして、調和のとれた美しい片山尻（かたやまじり）の籐巻共柄（ともづか）には、入念に生漆（きうるし）が塗り重ねられ、深い飴色に輝く。それが幽遠なる互目の刃紋と共鳴し、究極の美を演出。